最高裁判所大法廷 昭和25年(あ)228号 判決 1950年7月19日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人瓜谷篤治の上告趣意第一点について。
論旨は第一審判決が証人宮崎忠義の証言を証拠に採用したのは刑訴三二四条一項、三二二条等に違反するのを原判決が証人の証言は刑訴三二四条一項に当らないと判断したのは不法であるということを前提とするものである。しかし、所論の証言は被告人の供述を内容とするものでないから、所論はその前提において採用し難い。
同第二点について。
憲法第二五条第一項の法意は国が犯罪者に対し罰金その他の法定刑を定め又は酌量減軽その他刑の適用に関する規定を立法するについての標準若しくは制限を設けた趣旨の規定ではない。されば旧物品税法一八条一項が何人に対しても罰金刑を脱税額の五倍と定め同二一条において酌量減軽の規定を適用しない旨を規定したからといって憲法二五条には何等の関係もないことであって、同条に反するという所論は採用できない。
以上論旨いずれもその理由がなく、また、刑訴四一一条を適用すべきものとも認められないから同四〇八条によって主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)